愛の女神アプロディテの悲しい恋とアネモネの花

キュプロス王の娘ミュラは、愛の女神アフロディテを崇拝していませんでした。そのことに怒ったアフロディテは、ミュラに恋の魔法をかけて、自分の父親を愛するように仕向けます。それが思わぬ悲劇につながりました。

父親と交わったミュラ

アフロディテの魔術にかかり、父親のキュプロス王を愛してしまったミュラは、道ならぬ恋に苦しみます。毎晩父親と交わる夢を見て、叶わぬ恋にもんもんとしますが、ある時、よその女に化けて父親に言い寄ってしまいました。美しい女性が自分の娘とは気づかないキュプロス王は、すぐにその気になって彼女を受け入れます。

一度のセックスがミュラの心をさらに燃え上がらせます。彼女は、夜毎父のベッドを訪れ身をまかせ、性愛の悦楽に浸ります。しかし、二人の激しい愛の行為は、ついに父に正体がバレて終結します。

ミュラは絶望し、神々に「自分の体をこの世からも、冥界からも消し去って欲しい」と祈り、神々はこの願いを聞き入れます。神たちは彼女を一本の樹木に変えてしまいましたが、すでにこのとき、ミュラは妊娠していました。そうして10ヶ月後に、この木の裂け目から、とても美しい男児アドニスが誕生します。この美少年が、今度はアフロディテの恋心を奪うことになります。

美少年とのはかない恋

アフロディテは木の裂け目から生まれたアドニスを見るなり、恋に落ちました。誰にも見られないように子どもを隠し、箱に入れて冥界の女王ペルセポネに預けました。しかし、ペルセポネもこの子を見るなり、恋に落ちます。小さな少年をめぐってふたりの美女が争います。激しい争奪戦を仲裁したのはゼウス。一年の3分の1をアフロディテと、3分の1をペルセポネと、残りの3分の1はアドニスが自由に過ごすという裁きをしました。

アドニスは自分の自由時間の3分の1もアフロディテと過ごし、毎晩交わります。残りの3分の1はペスセポネと交わります。若き愛人アドニスは二人の美女の間を定期的に行き来しながら暮らしますが、ある日狩りの最中に、猪に身体を突かれて命を落としてしまいました。

アフロディテの呪いを発端に生まれたアドニスは、女神たちの愛にほんろうされたまま短い生涯を終えました。猪に突かれたアドニスの体から流れた血は、赤いアネモネの花になりました。風が吹くと散ってしまうアネモネの花には、そんないわれがあります。

愛の女神アフロディテの呪いで王女ミュラは実の父親と交わり子どもを産みます。その子アドニスはアフロディテに寵愛されたものの、若くして命を落とし、アネモネの花になりました。