嫉妬で熊に変えられた乙女、カリストー

ギリシア神話は主神であるゼウスの恋多き物語がたくさんあります。ゼウスの行いで妻のヘラが嫉妬に狂い、相手を呪うと言うのは一つのパターンとしてある話です。そんな話の一つに、美しい乙女カリストーの話があります。

処女性を重んじる女神の従者

カリストーは女神アルテミスの従者でした。女神アルテミスはゼウスの娘でアポロンとは双子の神で狩猟・貞潔の女神だったためその従者であるカリストーもアルテミス同様に処女を誓いとし、狩猟の日々を過ごしていましたが、その美貌に主神のゼウスが魅了されます。しかし、処女性を重んじる彼女は男性に対して警戒心が強く、普通では近づくことはできません。そこでゼウスはアルテミスの姿になって彼女に接近し、彼女と交わりました。その事実を知ったカリストーはアルテミスに知られるのを恐れて必死に隠しますが、数ヶ月後にアルテミス達と一緒に沐浴することになります。結局、衣服を脱いだ際にゼウスの子供を身ごもっていることをアルテミスに知られてしまいました。

主神ゼウスの妻の怒りを買う

このことがゼウスの妻であるヘラにも知られ、嫉妬に狂った彼女にカリストーは呪いを受けます。必死に弁明をするカリストーの姿は次第に真っ黒な毛に覆われ、手には爪が伸び口は大きな獣の顎になっていました。その姿は熊そのものだったのです。その後、熊に変えられた彼女はヘラがアルテミスに猛獣として討つよう説き伏せられ殺されました。ちなみに別の話ではアルテミスが純血を守れなかったとして追放、もしくはアルテミスによって熊に変えられたという話があります。ゼウス自身が妻であるヘラから彼女を守るために熊に変えたと伝わる話もあります。何れにせよ彼女は熊に変えられるという悲劇に直面したのです。

哀れんだゼウスにより星座に

多くの話ではカリストーはアルテミスによって射殺された後にゼウスが哀れみ、お腹の子供だけを取り出して遺体を天に上げて星座にしたと伝わっています。これが現在のおおぐま座です。この他に伝わる話が、カリストーは熊になって十数年生き続けると言うものです。姿が熊なので狩人に狙われ、心が人間の乙女のままだったために他の獣も怖いと言う生活をしていました。子供のアルカスはその後も立派に成長し、成人していました。ある時、山に狩りに入った際に雌熊と遭遇します。彼はこの熊を射殺そうとしますが、実は自分の母であるカリストーだったのです。これを目にしたゼウスは二人を天に上げカリストーをおおぐま座に、アルカスをこぐま座にしたと言われています。ちなみにこれを知ったヘラはまた激怒し、養父母で海神のオーケアヌスとテーテュースに頼んで海に入って休むことができないようにさせたと言います。このため他の星座が地平線に沈んでいくのに対して、おおぐま座とこぐま座は北極星を中心に常に空を回り続けることになったのです。

ギリシア神話ではこのようなゼウスと美しい女性のエピソードが沢山あります。いずれの話でも妻であるヘラの恐ろしい嫉妬により罰が与えられますがそのたびにゼウスが星座にしたり、ごまかしたりしています。ギリシア神話は女性の嫉妬の怖さと無責任な男性を戒める事のできるお話なのかもしれません。