悪女の中の悪女クリュタイムネストラ

「密通する女」「夫をだましてお金を奪う女」「不倫の果てに夫を殺そうとする女」など、悪女にもいろいろ種類があります。特に、「不義を働いたあげくに夫を殺す」のは、悪女の中の悪女と言われても仕方がないでしょう。ギリシア神話の中で、そんな女性の代表とされるのが、クリュタイムネストラ

エロティックな美人で、あっという間に男性をとりこにします。どんなに勃たない男性も、クリュタイムネストラの魔術にかかれば勃たせられ元気にさせられたと言います。男性としては願ってもない女性ですが、夫殺しを働きます。「悪女」と言われるゆえんですが、それには深い訳がありました。

略奪された結婚

クリュタイムネストラの最初の夫は、タンタロスというイケメン男性。二人は毎晩愛し合うほどの熱烈なカップルでした。夫のいとこアガメムノーンは、エロティックな彼女に横恋慕し、なんとしてもその体を手に入れたいと考えます。ミュケーナイの王であるアガメムノーンは、何でもできる男です。策を練ってタンタロスを殺し、クリュタイムネストラを自分の妻とします。さらに、報復を恐れて彼女と前夫との間の子どもも殺してしまいます。

略奪婚ではあったものの二人は愛し合い、4人の子どもをもうけます。しかしトロイア戦争が始まると、戦勝祈願のため、夫アガメムノーンは自分たちの娘を人身御供として神殿に差し出してしまいました。自分の娘を殺されてしまったクリュタイムネストラは、夫に恨みを募らせます。

夫が戦争で不在の間の身体を慰めて欲しいと思い不倫を開始

トロイア戦争は10年の長期にわたります。その間、夫は戦地でいろんな女性と交わっていますが、ひとり家に残されたクリュタイムネストラは寂しくて仕方がありません。近くにいた男性と恋に落ちるのも当然のなりゆき。夫のいとこアイギストスと密通し始めます。エロティックな関係に溺れた彼女は、不在の王である夫を排除し、アイギストスを王に立ててしまいます。

戦争が終わり夫が帰還すると、エロティックなサービスを施すからと浴室に案内。愛人であるアイギストスと共謀して、夫を袋詰めにして刺殺してしまいました。最終的には「夫殺し」の悪女となりますが、そこに至る経緯には同情ぜざるを得ない背景もあります。

ギリシア神話一の悪女クリュタイムネストラは、前夫を殺され、息子を殺され、娘を生贄にされてしまった女の復讐を果たしたともいえる悲しい悪女です。