いちずな思いが叶わず、愛想を尽かされたクリュティエ

思い立ったら即行動を地でいくギリシアの神々は、気に入った相手に対しては積極的過ぎるほど果敢にアタックしていくため、失恋することはまずありません。しかし一方で、彼らに恋する人々はあまり行動的ではないようです。

おかげで悲恋や失恋に終わることがしばしばあり、悲惨な結末や同情を誘う最期を迎えるものも珍しくありません。太陽神アポロンに恋したクリュティエも、彼への思いが届かず、かわいそうな末路を迎えた女性のひとりです。

アポロンの嫌がらせが、ふたりの女性に悲劇をもたらした!

ギリシアにおける理想の青年像ともされるアポロンですが、太陽神であることからもわかるように、恵みだけでなく残虐さも持ち合わせています。彼はある時、アプロディテとアレスの密通を他の神々にバラし笑い者にしました。

浮気の反省はしなくとも、仕返しだけは忘れずするギリシアの神々ですから、バカにされたことを忘れるわけがありません。怒ったアプロディテは、ペルシア王オルカモスの娘レウコトエとアポロンが密通するよう画策しました。

結果、今までアポロンに非常にかわいがられていた水の精クリュティエは、彼の気持ちが自分から人間の娘へと移ってしまったことで深い嫉妬を覚えます。そしてレウコトエの父オルカモスにふたりの関係をバラすことに決めました。

激怒する父親に生き埋めにされたレウコトエ

当然、結婚前の娘が勝手に男と通じていたわけですから、オルカモスは激怒し首から下を埋めてしまいます。アポロンは急いで助けだそうとしますが、彼女は弱りきっており、救うにはすでに手遅れになっていました。

彼は最後の手段として神々の飲む酒をそそぎましたが、復活させることはできず、レウコトエは一本の乳香の木に姿を変えてしまったそうです。悲しみで胸がいっぱいのアポロンには、クリュティエの弁解も耳に入りませんでした。

それどころか、自分から愛する女性を奪った原因を作った相手ですから、すっかり愛想を尽かしてしまいます。もう愛してもらうことは叶わないと知ったクリュティエは悲しみに暮れ、9日間飲まず食わずで過ごしたそうです。

思いが叶わず、失意のうちに花となったクリュティエ

すっかりやせこけたクリュティエは、ただ太陽を見つめました。なぜなら太陽の動きはアポロンの航路でもあるからです。ついに彼女は太陽を仰ぎ見たまま力尽き、身体は草木へと変わり顔は一輪の大きな花になりました。

クリュティエの化身はヘリオトロープ(太陽に向かう、という意味がある)、ないしヒマワリと言われています。ヒマワリの花言葉が「わたしはあなただけを見つめる」であることからも、彼女の思いの強さがうかがい知れるでしょう。

しかし、仕返しとは言えアポロンだけでなくふたりの女性にまでも不幸をもたらすあたり、ギリシアの女神たちの怒りというのは恐ろしいものです。あなたも不用意なことをして、女性を怒らせないよう気をつけましょう。