温厚な姉デメテルは怒るとゼウスより怖かった!?

ギリシアの最高神ゼウスには2人の兄と3人の姉がいます。長男のハデスと次男のポセイドン、長女ヘスティアと次女デメテルと三女ヘラです。三女のヘラはゼウスの正妻でもあるので、つまり近親での結婚ということになります。

神話において肉親同士の性行為は珍しいことではありません。ただ、基本的には合意の上での話であり、互いに好意を持っているからこそ成り立っています。しかしデメテルの場合は違い、強制的に子どもを作らされました。

弟たちにむりやり子どもを孕ませられた女神

大地の母、穀物の女神として知られているデメテルは温和な性格のためか、たびたび兄弟に肉体関係を迫られます。まずハデスに嫁いだペルセポネですが、彼女はデメテルがゼウスにむりやり孕ませられた子どもです。

また、海神ポセイドンにも強引に迫られ、結果デスポイアとアレイオンというふたりの子どもを生んでいます。毎回なかば強制的に性的な関係を結ばされるせいか、彼女はあまり兄弟たちに対していい印象を持っていません。

しかし豊穣の神だけであり、基本的には優しい女神のため、望まなかったとは言え娘や息子は大切にします。ですが現実の温和な人と同じく、一度怒らすと手がつけられなく、彼女のおそろしさはゼウスもよく知っていました。

本気で怒ったときは誰より怖い!デメテルのかけた呪い

どれほどおそろしいかというのがよくわかるエピソードとして、テッサリアの王子エリュシクトンの話があります。彼はあるとき、自身の屋敷を増築するためにデメテルの森の木を断りもなく勝手に切りだしました。

はじめデメテルは人の姿をとり、王子に向かって優しい調子で「木を切るのはやめなさい」と言ったそうです。しかし彼はまったく耳をかさず、切った木から血が流れだしても、まったく異に介さないようすで続けました。

とうとう我慢の限界を超えたデメテルは怒りをあらわにし、エリュシクトンに向かって「飢え続ける」呪いをかけます。おかげで彼は、食べても食べても満たされなくなり、あっという間に財産は底をついてしまいました。

自分の大事なものを傷つけられたときの怖さは神々でも随一!

ですが無一文になり、娘を売り払ってお金を得てもいっこうに腹が満たされることはありません。いくら食べても空腹の彼は、ついにはまるまると太った自分自身の身体を食べはじめ、そのまま命を落としてしまいました。

以上、女神の怒りが実におそろしいかというエピソードですが、基本的にデメテルは豊穣の神だけあって、滅多なことでは怒りません。加えて、上記の王の娘にはまったくなにも罰を与えず、父親を助けても咎めませんでした。

他に、娘ペルセポネが夫ハデスのもとで暮らす間は、へそを曲げて大地を実らさなくなったという話もあります。彼女の行動は、温厚なひとほど大切なものを傷つけられたとき、怖くなるということを伝えているのかもしれません。