母に愛されなかった醜男「ヘパイストス」

ゼウスの子供たちは皆優秀です。数多くの愛人たちとの子には、太陽と弓の神アポロン、月と狩猟の女神アルテミス、知恵と戦いの女神アテナ、英雄ヘラクレス、人間界一の美女ヘレナなどがい

ます。妻であり結婚の女神でもあるヘラとの間にも、戦いの神アレス、青春の女神ヘペ、出産の女神エイレイテュイアなど、美しい子どもたちが生まれました。

ただ一人、火と鍛冶の神「ヘパイストス」だけは例外で、オリュンポス一の醜男といわれ、母に疎まれてしまいます。しかし、結果としてそのおかげで美女を手に入れます。

母に嫌われて下界に放り出される

ゼウスは前妻テミスや愛人たちとのあいだに、美しく力の強い子どもを幾人も作っていました。後妻であるヘラは、それに対抗して、もっと美しく優秀な子どもを身ごもりたいと焦ります。精力絶倫のゼウスと毎晩交わり、子供を作ろうと努力しますが、その結果生まれた子どもがとても醜かったため、ショックを受けます。

ヘパイストスは生まれつき足が曲がっていて顔はとても醜男。ゼウスのような二枚目と自分のような美女のあいだに、これほど醜い子どもが生まれたことが信じられません。あまりにもヒドイ顔をしているわが子をみていると、とても平静に過ごすことができなくなりました。そこで、天から海に向かってわが子ヘパイストスを投げ捨ててしまいました。

母を恨んだ息子ヘパイストス

海に捨てられたヘパイストスは、海の女神テティスとエウリュノメーに拾われて、彼女たちに養育されました。生まれつき鍛冶が得意で何でも作ることができたので、二人にはお礼に宝石を作って贈ります。ヘパイストスの技術は有名になり名声を得ますが、自分を捨てた母への憎しみはどんどん大きくなり、彼は復讐を決意します。

成長したヘパイストスは、あるとき黄金の見事なイスをつくり、母親に贈ります。受け取ったイスに母ヘラが腰掛けると、鎖が出てきて彼女をイスに縛りつけ動けなくしてしまいました。ヘパイストスの技術は誰にも真似できないもので、彼の細工によって縛られた母は、どんなことをしてもそこから抜け出すことはできません。これをほどくことができるのはヘパイストスだけなので、ヘラを助けるため神々がヘパイストスを招聘しますが、彼はいきません。

仕方なく、酒神デュオニュソスがヘパイストスを酔わせて、無理やりオリュンポスに連れてきます。そこでヘパイストスは、母ヘラを解放する代わりに、愛と美の女神アプロディテとの結婚を神々に約束させました。こうして、世界で最も醜い男は、世界一美しい女性を手に入れました。

ゼウスの息子ヘパイストスは母に疎まれ捨てられますが、鍛冶の技術を使って母に復讐し、その結果美女をわが物にすることに成功しました。