禁断の恋は悲惨な結末に限る?ヘロとレアンドロス

神話はたびたび芸術家たちの題材となりますが、特に多くの作品で引用されているのがヘロとレアンドロスの話です。禁断の恋についてのストーリーであり、多くの人々の胸をうつ、いちずに相手を思う気持ちを描いています。

しかし禁止されていることを破った登場人物の多くと同じく、結末は悲しみに満ちたもので、救いはまったくありません。ただ、互いを思って愛し合うふたりの姿は、話の悲惨さとは別にきっと人のこころを打つことでしょう。

塔の上で暮らすヘロと、夜な夜な会いにくる青年レアンドロス

話に出てくる登場人物は、女神アプロディテの女神官であるヘロと、彼の恋人であるレアンドロスのふたりです。彼らは愛し合っていましたが、ヘロは神に身をささげる神官なので、恋愛することは禁止されていました。

ですからレアンドロスとの恋は秘密であり、一線を越えることは決してないはずでした。彼女はただ、自身が住む塔の最上階にて明かりをともして恋人を導くだけの日々で十分幸せで、それ以上を求めようとは思わなかったようです。

確かに女性は肉体よりも精神的なつながりを重要視する傾向にあるため、気持ちさえ通じていれば問題なかったのかもしれません。しかし男性は違いますから、毎夜会うたびにレアンドロスは段々と我慢がきかなくなっていきます。

彼女を説得するレアンドロス、結ばれたあとに悲劇は起こった

そしてついに彼は一線を越えようと彼女を説得することに決めました。「愛の女神アプロディテが、処女であることが正しいなどと言うはずはない」と言います。レアンドロスの言い分を聞き入れ、ついにヘロは身体を重ねました。

ふたりは結ばれましたが、特に神々がすぐさま罰を下すことはなく、なにごともなかったようでした。しかし、ある冬の夜に悲劇はやってきます。その日はひどい嵐で、いつもならあるはずのヘロのともす明かりは消えてしまいました。

おかげでレアンドロスは道しるべが見つけられずに行くべき方角を見失い、ついには波にのまれて溺れ死んでしまったそうです。そして彼の死体を発見したヘロはあまりのショックに、彼の後を追って塔から身を投げました。

天罰かどうか謎に包まれた結末!?意外と規則には厳しい?

以上、典型的なタイプの悲恋話ではありましたが、珍しい点がいくつかあります。まずひとつは、はじめから終わりまでギリシアの神々が一切出てこないということです。導入で名前こそ登場しますがアプロディテは直接関与はしません。

また呪いや天罰といった描写もなく、ふたりの悲劇は単なる偶然だとも、決まりを破ったヘロに対する罰だともとれます。さらに一線を越える際に言ったレアンドロスの言葉に、多少の説得力があるのも面白い点でしょう。

確かに、性に対して奔放なギリシアの神々が、男女が愛し合うことを禁じていない可能性は十分にあります。ただ純潔を破ったためクマにされてしまったカリストの例もありますし、意外と規則には厳しいのかもしれません。