失恋をセックスで癒した

ギリシア神話に登場する恋物語のなかでも、裏切りの悲恋として最もよく知られているのが、アリアドネーの献身です。アテナイの王子テセウスにひとめぼれをし、心も体も捧げつくし、彼のために知恵を出して危険なミッションを手助けしたのに、ポイ捨てにされてしまいました。処女を捧げセックスの悦びを教え込まれたあげくに、離島に置き去りにされてしまったのです。心はいつか癒されますが、高まった性欲はどうしようもありません。

毎晩抱かれてエクスタシーに酔いしれていただけに、快感のない生活には耐えられなくなっていました。そんなアリアドネーを救ったのが、酒の神バッカスです。彼女を抱き締めると、それまでに経験したことのないほどの悦楽の世界に導き、体も心も癒しました。ただ、アリアドネーは人間ですが、バッカスは死ぬことのない神です。彼女が先に死ぬという運命がありました。アリアドネーを失うと、バッカス(デュオニューソス)は彼女の冠を天に放り上げます。それが、夜空に光る「かんむり座」となった、と言われています。

ポイ捨て事件とは?

王子テセウスは、怪物ミーノータウロスに毎年7人の少年少女が食事として捧げられていることに憤りを感じて、退治に向かいます。ただ、ミーノータウロスが暮らしているのは、1度入ったら2度と出ることはできないと言われる迷宮。何らかの策がなければ、倒すことももちろん、帰ってくることができません。そこで、テセウスが頼ったのは、美しい処女アリアドネーです。美男子のテセウスに人目で恋に落ちてしまった彼女は、「結婚すること」を条件に手を貸しました。

二人は深く結ばれ、初めての経験であったにもかかわらず、アリアドネーは激しい悦びを覚えます。彼との性生活を手に入れるため、危険をおかしてこっそり短剣を手渡しました。また、紅い麻糸の毬を授け、それを頼りに引き返せば良いと教えます。この手引きによって、テセウスはミーノータウロスを倒して戻るという偉業をなしとげたのです。

二人はテセウスの故郷アテナイに向かいますが、途中の島に立ち寄った際に、彼は彼女を島に残したままこっそりと出港してしまいました。彼は最初からポイ捨てにするつもりで、彼女をタブらかしていたのです。

あとに残ったのは寂しい体だけ!?

テセウスに置き去りにされたアリアドネーは、悲嘆にくれました。初体験の相手にセックスの悦びを教えられたのに、あっという間に裏切られてしまい、寂しい体をもて余します。どう生きていけば良いのか分からないと落ち込んでいるところに現れたのが、バッカスです。酒の神であるバッカスは、心優しい男です。アリアドネーの境遇に同情し、その体を癒してあげました。

二人は幸せな生活を送りましたが、人間であるアリアドネーには寿命があります。年月と共に老い、そして死んでいく運命です。神であるバッカスは、アリアドネーの死を知ると、その冠を天に上げて、ひとつの星座を作りました。生涯彼女のことを忘れないように、と。

いわゆる「やり逃げ」をしたテセウスは、その後もスキャンダルを次々と起こします。アマゾネスの女王を略奪したり、王女ヘレネーや冥界の女王ペルセポネーを誘拐したり。生涯、暴れん坊を通したのでした。