美少女から怪物へ

ギリシア神話では、人間が神々の怒りに触れ、動物や植物に変えられる話がしばしば見られます。
その中でも有名なのがメドゥーサとその姉妹の物語。
しかし、ギリシア神話上最強最悪の怪物として知られるメドゥーサがもともとは美少女であったことをご存知の方は少ないのではないでしょうか。

ゴルゴーン三姉妹は怪物ではなかった?

ステンノー(強い女)、エウリュアレー(遠くに飛ぶ女)、そしてメドゥーサ(女支配者)の三姉妹はゴルゴーン(恐ろしいもの)と呼ばれ、人間だけでなく神々にも恐れられる存在でした。 髪の毛の代わりに頭には無数の蛇が生え、イノシシのような牙と青銅の手、黄金の翼を持ち、見た者を石に変えてしまうという力を備えていたからです。
彼女たちは地母神ガイアと海洋神ポントス、つまりギリシア12神以前のティーターン12神の二柱であるポルキュースとその姉妹ケートーの子どもでした。
れっきとした神々に連なる出自だったのです。
それがなぜ、身の毛もよだつほどの恐ろしい姿になってしまったのでしょうか。

やっぱり傲慢は身を滅ぼす

その原因は、末娘のメドゥーサにあったとされています。
三姉妹は揃って美しい容姿の持ち主でしたが、メドゥーサは特に優れていて、その上今で言う「美髪」でもありました。
ところが、「私の髪は女神アテーナーよりも美しい」とメドゥーサが自慢したことがアテーナーの逆鱗に触れ、彼女は醜い怪物に姿を変えられてしまったのです。 まさに口は災いのもと。
さらに、メドゥーサの二人の姉も、妹を元に戻すようアテーナーに抗議したことでその怒りを買って同じような姿にされてしまいました。
こちらは完全なとばっちり、妹思いが仇になったという不幸な話ですが、ゴルゴーン三姉妹はこうして誕生したのでした。

ペルセウスのメドゥーサ退治

ペルセウスはギリシア神話の中でヘラクレスと並び称される英雄です。
父はゼウス、母はアルゴス王女ダナエー。
高い塔に幽閉されたダナエーは、黄金の雨に姿を変えたゼウスと交わってペルセウスを産みますが、「娘の子に殺される」と予言された父王は、母子ともども箱に入れて海に流してしまいました。 セリーポスという島に流れ着いた母子は現地の漁師に助けられ、ペルセウスはすくすくと成長します。
しかし、漁師の兄で島の領主・ポリュデクテースはダナエーを我がものにするため、ペルセウスを遠ざけようとメドゥーサ退治を命じました。
ゴルゴーン三姉妹のうち、メドゥーサだけが不死身ではなかったので、ペルセウスは神々の助けを借りつつ、見事その首を討ちとりました。
彼はメドゥーサの首を使って、帰途後に妻となるアンドロメダ―を助けたり、ポリュデクテースを石にしたりしたあと、アテーナーに捧げました。
アテーナーは自らが怪物にしたメドゥーサの首を盾に埋め込んで、以後愛用したそうです。

自分の美しさを誇示したばかりに、怪物に変えられ、首を落とされ、さんざん利用された挙句にその張本人の武器にされるとは、メドゥーサも思わなかったことでしょう。 何だか気の毒になってしまいますよね。
ここだけ見ると、「本当の怪物はどちら?」と聞きたくなりませんか?
ちなみに、メドゥーサの首から流れた血の中からは天馬ペーガソスが誕生しています。