義理の息子に恋をしたパイドラー

クレタ王である夫の罪の犠牲となり、牡牛と交わって牛頭人身ミーノータウロスを産んだパーシパエーには、ほかにも子どもがいました。長女はアリアドネ、次女はパイドラーです。長女アリアドネは、自分の兄であるミーノータウロスを退治に来た英雄テーセウスに一目惚れ、あっという間に深い関係になります。そして、兄を殺すことに協力すると誓います。

ミーノータウロスが閉じ込められている「クノッソス宮殿の迷宮」は、脱出不可能といわれるほど複雑。そこで、アリアドネは知恵を授けます。怪物とはいえ血の繋がった弟を殺しに来た男を助けるというのは尋常ではありませんが、彼が迷宮に入るときに糸をもたせ、それをたどれば帰りつけると教えました。そして、見事ミーノータウロスを倒した彼とともに逃亡。しかし、逃げる途中で見捨てられ死んでしまいます。

そうして、テーセウスが次に結婚したのは、アリアドネの妹パイドラーでした。

夫はかなりの女たらし、でも、夫の子供は超美男子

パイドラーと結婚したものの、実は、夫のテーセウスにはすでに妻がいました。女部族アマゾネスの女王で、ふたりの間にはヒッポリュトスという男児もいます。二人の結婚を聞きつけ怒った女王は、アマゾネス軍団を引き連れてテーセウスを襲います。テーセウスは策をめぐらし対抗して、女王を殺してしまいました。「英雄」とされるテーセウスは、女性を利用しては殺すというパターンの好きな男のようです。

何年か経ち、アマゾネスの前妻と夫との間にできた子供ヒッポリュトスが、父テーセウスのもとを訪ねてきました。驚いたのは、妻のパイドラー。あまりにもその若者が美しいので、夫の子どもであるにもかかわらず、一目惚れしてしまいます。

不道徳な恋の果てに、相手を陥れる悪女になったパイドラー

道ならぬ恋に落ちたパイドラーは悩みます。毎日毎日悩み続けやつれていきます。それを心配した乳母が、「このままでは死んでしまう」と、ヒッポリュトスにパイドラーの恋心を伝えます。しかし、恋はみのりません。ヒッポリュトスは女性のいやらしさを罵倒し、拒絶します。

悲しみに打ちひしがれ、恥をかいたという思いでやるせなくなったパイドラーは死を決意し、自殺しますが、夫あてに遺書を残しました。「あなたの息子に言い寄られたが、拒否できないので死ぬより他に道はない」と書いてあります。怒った夫は、自分の息子ヒッポリュトスを殺してしまいました。

他の女性と結婚し子どもまでいたことを隠していた夫。姉を殺した夫。それを知らずに結婚して、夫の子供に恋をしたために、自殺をする羽目になりました。パイドラーは哀れな女性です。